~夢を応援し合える文化を創造しよう〜音楽活動戦略コンサルタント大関勇気さんインタビュー#1
B!
「音楽活動には、戦略が必要である」
「ミュージシャンは、リーダーだ」
そういって、音楽活動戦略コンサルタントとして活動する大関さんとの出会いは、もうお互いに思い出せないほど昔のことになります。
その間、ライブやイベントを通じて関わり合いながらお互いに感じていた共通する考え方や視点を題材に、特に台本を用意することもなくざっくばらんに語らってみたところ、想像以上に充実した内容になりました。
(本記事は、事前にプロフィールなどヒアリングをした上で、Facebook・YouTube・Twitter上で対談ライブ配信形式でインタビューをさせていただいた内容を文字起こしして、記事化したものです)
こんな方に読んでほしい!
✔ 音楽を通じて多くの人を幸せにし、ポジティブな影響を与えていきたい方
✔ 自分の作品を世に出すことはできた。じゃあ、それをどう多くの人に知ってもらうかをいつも考えている方
✔ 自分が心を込めて作り上げ、良いと信じて発信したものが、必ずしも世間に受け入れられるとは限らずにモヤモヤしている方
✔ まだ本気出してないだけで、実は今でも内心プロミュージシャンになりたいという願望を持っている方
✔ バンドが解散してメンバーが音楽やめちゃうのが悲しすぎる方
目次
大関勇気さんとは?
musician’s Agent Club代表/プロデューサー
1979年3月2日生まれ
東京都新宿区出身
東京・会津若松・仙台など多拠点で活動。
ミュージシャンとして音楽活動を経験し自主レーベルを主催し独立。イベントの企画・運営などを行う。主催する音楽活動の学び場「リーダーミーティング」では、多くのフリーランスアーティストを輩出する。
「音楽業界 金のバイブル」(著)/ブログ歴14年/作家・編集者としての肩書きも持つ。
音楽雑誌や教則本を中心にKindle書籍を100作品以上リリース。
▼X https://twitter.com/artist_field
▼Instagram https://www.instagram.com/creators_agent_club
対談の様子をYouTubeで観る(アーカイブ)
下記のサムネイルをクリックすると、対談動画が再生されます。
「音楽活動戦略コンサルタント」を始めたきっかけ
──今日は音楽活動戦略コンサルタントの大関勇気さんをお迎えしています。
こんにちは、どうぞよろしくお願いします。
──先ほど打ち合わせをしていたら、大関さんとのお付き合いはなんと10年も遡るということが判明しました(笑)
2人とも覚えてないくらい昔ですね(笑)
──それでは、大関さんの自己紹介とバックグラウンドについてお聞かせください。
大関勇気です。今は音楽活動戦略コンサルタントとして活動しています。始めてから10年くらいですかね。
クリエイターやフリーランス、企業のコンサルティングを行う傍ら、イベントの仕事や出版も行っていて、最近はKindleでの電子書籍出版も手掛けており、39作品目* のリリースを控えています。
*対談当時。(現在100作品以上リリース。)
──素晴らしい経歴ですね!大関さんは元々ミュージシャンで、音楽畑での経験を活かしてコンサルティングを始めたのですね。
はい、10代の頃から音楽に興味を持ち、20代はバンド活動に打ち込んでいました。
音楽業界でのキャリアは約15年前、27歳の時に自分でレーベルを立ち上げ、CDを制作・流通させることから始めました。
ある日、対バンしたバンドのメンバーが僕のライブを見に来て、「デビューしたんですか?」と尋ねたことがあり、自分でやったことを説明すると彼からCD制作の過程について詳しく知りたいと興味を示されました。
そこで流通業者の紹介から始まり、CDの制作方法、Pro Toolsを使った音源制作、ジャケットデザイン、バーコードの取り扱いなど、一連の過程を詳しく説明しました。
その結果、彼から感謝され飲み代をご馳走された経験が、「自分の経験や知識が他人の役に立つ」という実感のきっかけとなりました。
その後SNSが流行り、もっと多くの人の役に立てるかもしれないと思って、情報を発信するようになり、さまざまな相談を受けるようになったんです。
ただ、相談を受ける中で「学んだ、分かった、良かった」で終わってしまうことがあると気付いて。そこで相談者が実際に動くための一歩として、コンサルタントとして有料でノウハウを提供するようになりました。
──「教えてもらったけれど動かない」という状況を避けるために、料金を設定したわけですね。
初めて楽器を買うときに少し高価なものを選ぶように、投資をすることで本気度が上がると思います。ちょっとお金を出すだけで気持ちだけでも全然違うじゃないですか。
そうすると次は「コンテンツを世に出すことはできた、じゃあ、それをどう売るか?」っていう壁にぶつかるわけですよね。
コンサルでは、音楽家やクリエイターが自分の作品を市場に出す方法、そしてそれをどう広めるかという点に焦点を当てています。
30代はマーケティングやブランディングを勉強して、学んだことを広めていくことをずっとやっていました。
それが、音楽家さんの勉強会と交流会を兼ねた「リーダーミーティング」です。
音楽家のための学びと交流の場、リーダーミーティングとは
──大関さんが主宰されている「リーダーミーティング」について、まだご存じない方々へ詳しく教えていただけますか?
リーダーミーティングは、音楽家が音楽活動について学ぶ場を提供することを目的としています。
楽器やボーカルのスクールは数多くありますが、音楽活動自体の指導を受ける場所は少ないのが現状です。
そのギャップを埋めるために、元SONYのプロデューサーさんなど専門家を招いて、マーケティングやSNSの使い方などを教えています。
また、ミュージシャン同士が自らの活動を共有し合える交流会も実施しています。
ライブハウスでの出会いはあっても、深い交流にはなかなか発展しないことが多いです。
そこでミュージシャン同士で活動をシェアできれば自分たちの活動の刺激になると思い、ミュージシャンの集まる場所を作ったんです。
──地域とか店にもよるかもしれないけど、そこまでアットホームなことはあんまり無いですよね(笑)
ライブハウスで対バンをしたり楽屋で一緒になったりしても、なかなか深い相談ができるレベルにまではなりませんよね。
だから、同じ志や価値観を持つ人たちが集まれるような場を設けることで、互いの間の壁を取り除こうと思ったんです。
ディスカッションやワークショップを通じて交流を深めることで、参加者同士が新たな活動を始めることもあります。
実際に、イベントの主催やミュージックビデオの制作など、多岐にわたる活動が生まれています。
そうした活動を通じて出会った人たちが、自分たちで幅広く活躍する姿を見ると、この取り組みを始めて良かったと感じます。
満ちるさんとの出会いも、実はこのような活動がきっかけでしたね。
──そうですね。横のつながりみたいなものもできていくし、ありがたいことだなと思います。
自分がミュージシャンとしてやっていたということも大きいです。バンドが解散してメンバーが音楽をやめちゃうのがすごく嫌だったんですよね。
あと、若い頃って音楽が全てみたいな感じになるでしょ。でも人生があって、その中に音楽があるわけで。
──そうだよね。ライフがあって、音楽がある。
ライフがあって、その中でどうやって音楽と関わるの?ということを伝えたかった。
自分で納得できる音楽活動をやっていかないと苦しくなるということを伝えたくて発信しています。
リーダーミーティングは2021年で10周年を迎え、その経験を書籍にまとめて出版しました。
──なぜ「ミュージシャンミーティング」ではなく「リーダーミーティング」と名付けたのでしょうか?
リーダーとは一般的には指導者やトップの人、社長さんや経営者のような、組織やチームの中で重要な役割を担う人々を想像しがちです。
そういう意味合いもあるけど、僕はリーダーを「影響を与える人」と定義しています。
実際、家族や友人を含む周りの人々に影響を与える能力は誰にでもあるので、結局のところ誰もがリーダーなんです。
ミュージシャンも例外ではなく、音楽を通じて多くの人を幸せにし、ポジティブな影響を与えていますよね。
だから、ミュージシャンはリーダーであり、影響力を持つ人物であるという自覚を持つことが、ミュージシャンとしてのあり方だと僕は提案しています。
音楽活動や表現を行うこと自体が、誰かに何らかの影響を与える行為です。
そして、その「誰か」は自分自身であっても構いません。
この自覚を持って表現活動に取り組んでほしいという意味で、リーダーミーティングと名付けました。
──素晴らしい視点ですよね。ミュージシャンであることは、それだけで人々に影響を与えていて、発信源になり得るわけですよね。
「プロを目指している」と自称する人が「ライブに来てください」や「CDを買ってください」と言うのはよくある話ですね。
でも実際には、商品やサービスを売っている時点で、その人はすでにプロなんですよ。
多くの人が「プロ」や「リーダー」という肩書きに対して他人の評価を過剰に気にしていると感じますが、それには特別な基準や資格はなく、自分がまずプロ、リーダーであるという自覚を持つことが始まりだと思います。
──自分や自分たちの活動を他人の視点で見て「まだまだ」だとか「大したことない」と自己評価してしまうのはすごくもったいないことですよね。グループのリーダーや責任者でなくても、自分が影響力を持つ存在であると自覚すると発言や行動も自立したものになってくるのではないでしょうか。
本当にそうだと思います。
ミュージシャンのモヤモヤ?モチベーションの維持こそ難しい
──音楽家が感じる「モヤモヤ」というのは、具体的にはどのようなものですか?
みんながモヤモヤしていることがいっぱいあると思うんですよね。特にミュージシャンは違和感のカタマリじゃないですか(笑)
一つの大きなモヤモヤとしては「自分が良いと思っているものが本当に売れるのか?」という疑問があります。
自分が心を込めて作り上げ、良いと信じて発信したものが、必ずしも世間に受け入れられるとは限りません。
そこには自分の持つ価値観と、市場や一般の人々が好む価値観との間にズレがあることが多いんです。
多くの場合、流行りのものを良いと評価する傾向にあるわけですよ。友達が「いいよ」ってススメてくれたものを「いいね」って共感し合いたいんですよ。
例えば、「行列ができているラーメン屋は美味しいはず」という思い込み、人々が集まっているからなんです。
実際のコンテンツの質を自分基準で判断するよりも、まわりの人間関係や社会の中でどう振舞うかに重きをおく傾向にあるわけです。行列ができるラーメン屋はまずくはないし、普通に美味しいし、それで充分幸せですから。
そこにズレを感じている場合が多い。
──そのズレに対して、ミュージシャンはどのように対応すれば良いのでしょうか?
自分の音楽が良いか悪いかで評価されているわけではないんです。
特に「プロを目指している」(まだプロではない)というレッテルが貼られると、人々は「プロの音楽を聴きたい」と考えがちで、そうなると敬遠されることもありますね。
だから、自分の言動と理想のミュージシャン像が一致していることを示して発信することが重要です。
──バンドが解散したお話もありましたが、そこで音楽活動をやめてしまう人もけっこういますよね。創作意欲が湧かなかったり、以前ほど前向きになれなかったり、年齢を重ねて体力が落ちたりということもあります。納得のいく音楽活動を継続的にやり続けることはすごくエネルギーがいるし、難しいと感じる方も少なくないと思いますが、その辺りはどうですか?
モチベーションを維持するために「心理的安定を保とう」と伝えています。
自信を持っているときや周りからの応援があるときは行動できますが、逆に自信がない時や否定される時には、行動に移すのが難しくなります。
若い頃は、反発心から「やってやる!」という気持ちがモチベーションになることもありますが、常にそうとは限りません。
応援される活動をして、応援される自分と環境を作ることが大切なんですよね。
僕は高校時代、親に「音楽なんかやっていないで勉強しなさい」と言われました。親戚のおせっかいなおばちゃんもよく言ってきましたね(笑)
勉強には答えがあって、一定の範囲内で解答が見つかりますが、音楽には答えがないから、めちゃくちゃおもしろくて、どんどんハマっちゃいました。
でも僕の親みたいに、違う価値観を持つ人からは応援されず、否定されることもありますね。
──「何の意味があるの?」とか「頭良いんだから大学でも行けば?」みたいな感じですよね。
そういう価値観を持つ人がいても、それはそれでいいと思います。
それでも夢を持つ人には応援してくれる人がいると信じて新しいことに挑戦してほしいですね。
僕は過去1年ほどで電子書籍に力を入れ、30作品以上を出版していますが、ミュージシャンももっとそういった新たなことに挑戦すべきだと考えています。
ただ、新しいことを始める際にはどんな結果になるかが見えないため、広がりにくいこともあります。
でもYouTuberも最初は認知されていなかったでしょ。
「面白ふざけてやっているだけで、何が楽しいの?」という見方をされていた人たちが、今では立派な職業として確立しています。
それもまた、答えのない活動の一つですよね。
──YouTuberは子供の夢ランキングの上位ですしね。
最初にやった人は、叩かれたり、否定されたりしたかもしれないけど、そんな中でも面白がって一緒にやってくれる人たちがいたから続けられて、こうやって成り立っている。だから「応援される」ということがすごく大事です。
満ちるさんもミュージックライフ・スタイリングの活動で、家に自分の音楽スペースを作ろうってよく言っているじゃないですか。
それは家族から応援されないとできないことですよね。
──「応援される」ということは、CD購入数やファンが増えることだけではなく、家族や友人など身近な人々からのサポートも含まれますよね。例えば、子供をスタジオに連れて行くとき、仲間や家族からの理解や助けがあれば「応援されている」という実感が得られます。
また、創作活動に集中するためにはそのためのスペースを作ることが求められます。主婦やママは(家庭の中で)、ひとりになれる時間と場所がないのが当たり前だからこそ、家族やパートナーに応援してもらうことが大切です。でも、そこまで教えている先生はいませんね。レッスンから帰ってきて、教わったことをやろうとしても家の中がそんな状況じゃないなら、まずは人生・生活を整えないと進んでいくことはできないじゃないですか。
そこが悩みであることは多いけど、気づいていなかったり言えなかったり。
音楽のレッスンを受けに行って、「家に練習する場所が無いんですよ……。」と先生にはなかなか言えないですよね。
──言ったとしても「じゃあ個人練習でスタジオ入れば?」と言われて「それはお金がかかるし!」「ひとりで出掛けるにも家族の理解が必要だし!」とまた別の問題が出てきます。私はその問題をミュージックライフ・スタイリングで解決しようと思っていますが、そこまで踏み込んでライフチェンジのお手伝いをしている人はあまりいないと思います。私自身がそのような踏み込んだ助言が欲しかった側なので、やってみたら求めている人が他にもたくさんいた、ということですね。
そうですね、求めている人はたくさんいると思います。
ここまで、大関さんがコンサルタントを始めたきっかけ、リーダーミーティングについて、ミュージシャンのモチベーションの維持についてお話しいただきました。