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「フラメンコの魅力は特有のリズムと肌で感じられるグルーヴ感!」フラメンコギタリスト徳永兄弟ロングインタビュー(#3)

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前回に引き続き、フラメンコギターデュオ「徳永兄弟」ロングインタビューをお届けします。

満ちる
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第3回目の今回は、コロナで外出自粛中にじっくりとした自分たちに向き合う時間を過ごされた様子、生のフラメンコの魅力、フラメンコギターの地域性、フラメンコ特有のリズム「コンパス」についてなど、バラエティに富んだ話題をご紹介します。

前回の記事(#1)はこちら↓

「スペイン留学で本場のフラメンコギターを聴いたら、心に火がついた。」フラメンコギタリスト徳永兄弟ロングインタビュー(#1)

前回の記事(#2)はこちら↓

音楽家の天敵は「物件探し」と「通勤ラッシュ」?フラメンコギタリスト徳永兄弟ロングインタビュー#2

フラメンコギタリスト徳永兄弟とは?

幼少期より父、徳永武昭のもとフラメンコギターを始める。
中学卒業後スペインへギター留学。
日本フラメンコ協会新人公演奨励賞ギター部門を兄弟共に2年連続受賞。
兄はスペインのセビージャにてCERTAMEN ANDALUZ FLAMENCOS アンダルシアフラメンココンクール準優勝
弟は2019年にスペインのバルセロナでの国際コンクールで決勝進出し4位に入賞。
その後、日本とスペインを行き来し様々な舞台にて活躍し現在に至る。
2022年 【日本コロムビア株式会社】とマネジメント契約を結ぶ

徳永兄弟公式ホームページ

自粛期間は「自分たちと向き合う時間」だった

YouTube フラメンコギター徳永兄弟Channel

――お二人は長く活動されていますが、次のライブやレコーディングのための準備が増えてくると、個人的にやりたいことよりも現場の準備時間が増えると思います。日々の練習はどのようになさっていますか?

康次郎:忙しいときは日々、現場の予習に追われますね。
フラメンコって即興の部分が多いんですけど、決まっている部分もあるので事前に「こういうことをやりたい。」とリクエストの音源が来たときは予習をします。
今(取材当時、2020年5月)はコロナ禍でライブがキャンセルになっているので、自分たちのことに集中できています。
そういう意味では落ち着いて活動できていますね。

健太郎:やっとやりたいことや自分たちの練習など、自分たちときちんと向き合える時間ができています。

――現場が続く忙しい時期に余裕ができたらやりたいと思っていたことを、やっとやれる時間ができたんですね。

康次郎:僕ら二人の活動は、自分たちのオリジナルの曲を弾くので作曲をしなければならないのですが、他の公演の準備やライブの準備がある時はそれどころではなくなってしまいます。
公演やライブが少ないと、フラメンコギターの重奏の活動に集中できます。
前は忙しい合間を縫ってやっていたんですけど、今は自分たちの作曲にじっくり集中できています。

――そういう意味では、自粛期間も悪いことばかりではなかったんですね。

生のフラメンコの魅力とは?

同じ空間、同じ環境にいないと音の違いはわからない(健太郎さんスペイン留学でのクラスの様子)

――オンラインサロン(徳永兄弟のFLAMENCO SALON)を始められて、初心者や最近フラメンコに興味を持った人と触れ合う機会が増えていくと思います。そういった人に「どうしたら上手くなりますか?」や「どうしたらお二人のようにプロになれますか?」と聞かれたらどんな助言やメッセージをしますか?

康次郎:僕は上手な人と一緒に音を出したり、たくさんアドバイスを聞いたりすることを勧めますね。
やはり同じ空間にいないと音の違いはわかりません。
ライブでマイクを通して聴いたり、YouTubeで音を聴いたりしても、自分の出している音とプロの人が出している音の違いは同じ空間、同じ環境で響かないと多分わからないんです。
僕自身、目の前で演奏されるとこんなにも違うんだとすごく実感しました。
そこで感じた違いから、自分の音に何が足りないのかがスッと入ってきます。
だから、目の前で演奏を聴くことは重要だと思いますし、ライブに行くのも大事だと思います。
動画を観て練習もできますが、その場で感じる雰囲気から吸収することも大事です。

――「生の音」を大事にされているということですが、フラメンコギターというのは弦の振動も生で聞こえる範囲、目の前で弾いている空間というのが大事なんですか?

健太郎:その空気を共有するということが一番大事です。
だからホールコンサートよりも、タブラオ(ショーレストラン)のような30人程の小さいキャパのほうが僕らの魅力は伝わりやすいと思います!

康次郎:なるべく近い距離のほうが、より魅力が伝わります。

健太郎:300人くらいの大きなホールでフラメンコの魅力を伝えるのはけっこう難しい(笑)

康次郎:フラメンコは踊りも歌も近いに越したことはないと思います。

健太郎:そうだね。生音で、弦の振動や空気感を肌身で感じられる距離感がすごく重要です。

――目の前で汗が飛び散る!みたいな距離のステージでフラメンコを観るのは最高でしょうね!

康次郎:僕がフラメンコを観に行くときはできるだけステージに近い席を取ります。
距離が近いとアイコンタクトのような即興のコミュニケーションがわかるんですよ。
「あ、今なにか合図を送った!」というのがわかるので楽しいです。
ショーだけを楽しむなら気にしないと思いますが、僕はコミュニケーションを観るのも楽しみなので、なるべくステージに近いところで観ますね。

――大きなコンサートホールだとPA(音響装置)を通したりマイク通したり、エンジニアさんが音を作ったりうまく調整してくれますもんね。

康次郎:フラメンコには2種類程あって、ショーレストランのように近い距離で生音を楽しむ即興のものと、PA(音響装置)を入れて照明や舞台設定を作る公演があります。
そういった公演は、照明や舞台設定があるので大人数で踊る群舞も映える良さがあります。
「テアトロ(劇場型)のフラメンコ」といわれていて、遠くから観ても楽しめます。
どちらも好きですが、僕のフラメンコの原点は即興でそれが醍醐味だと思っているので、即興のフラメンコを観に行く割合が多いです。

――テアトロ(劇場型)だと即興の要素は少ないのでしょうか?決まった演奏をするんですか?

康次郎:一部を即興にする場合が多いです。
音楽も決まっていて、照明もタイミングを合わせて照らします。
テアトロを活かした演出になりますね。
ただ「この部分は即興でやりますよ。」というところが組み込まれていることがあります。
観ていても「あ、ここ決めてないな(即興だな)」とわかります。

――観客にも即興だということは伝わるものですか?

康次郎:そうですね。テアトロでも即興を入れる人もいますし、即興なしで全部の構成をしっかり決めている人もいます。
僕もそういう公演で弾くことがありますが、一小節もズレちゃいけないので紙にバーッと書いておくんです。
普段は即興で弾くことが多いので、公演のときはかなり練習しないといけないですね。

フラメンコギターは楽譜を見ない?!

康次郎さん 留学時代にスペイン人の歌い手の方とセビージャのバルで行ったライブの様子

――演奏中に譜面は観ますか?

健太郎:譜面は一切使わないです。演奏中、譜面は読めないですね。

――それは公演が小規模であっても大規模であっても変わらず?そもそもフラメンコギターは楽譜を観ながら弾くものではないのでしょうか?

健太郎:どうなんでしょう?僕らは楽譜を見て弾くことを教わってきてないですね。

康次郎:楽譜はもうずっと見てないですね。
僕らが通っていた学校では、譜面ではなく演奏スタイルを目で見て覚えるスタイルでしたね。
スペインに譜面を導入している学校はないかもしれません。
僕らの先生も譜面は読めなかったです。

健太郎:コードも形で教えてくれます。
押さえ方はこんな形って。
コードの「C」の形はカポをどこに付けても「C」なんですよ、という風に。

――なるほど!実音とは関係なく形で教えるんですね!

健太郎:そうそう!!(笑)

康次郎:形なんです。「C」の形。
日本に来るとフラメンコ以外のジャンルの人とコラボがよくあって、その場合は譜面を使ったり、その場で音楽の言語を使ったりするじゃないですか。
それが訳わかんないです!

健太郎:「どういう音の組み立て方がディミニッシュ(コード)」じゃなくて、「この形がディミニッシュ(コード)の形!この形をすれば全部ディミニッシュ(コード)の音が鳴る!!」みたいな、僕らはそういう考え方です。

康次郎:だから僕らは他の人が譜面をもらっているところで音源をもらって、頑張って耳コピをしています。

――耳が命ですね!例えばロックギターやポップスのバンドスコアなどには、TAB譜というものがありますよね。6本弦が描いてあって、どこのフレットを押さえるというのが示されているんですが、そういうものもない?

健太郎:そういうものは辛うじて読めますよ。

康次郎:ギリギリですね。TAB譜は見たままだからね。
個人的にフラメンコの曲をTAB譜で作っている人はいます。
でも僕らは使わなかったし、楽譜を使って授業をする人はいないですね。

――フラメンコギタリストの池川寿一さんは本や楽譜をたくさん使われているようですね。

康次郎:かなり画期的ですね!

康次郎:それは素晴らしいことだと思います。

フラメンコギターには地方ごとに流派がある

――耳や手の形で覚えるものって、口伝えになりますよね?本などに書かれていると再現性が高く伝わるけど、口頭で伝えられると「伝承音楽」というか、世代を越えて親から子へという感じですね!

康次郎:まさにそうで、同じフレーズでもみんな独自の弾き方になっています。
先生も言うんですよ。
「俺は今こういう風に教えているけど、自分の好きなように弾け。」
「教えている弾き方と変えて弾いていいから。」と。
フラメンコの有名なファミリーも、子どもへの伝え方はそれぞれ違って、全く同じようには伝わっていないんですが、弾き方の流派だけが伝わっている感じですね。

――弾き方の流派があるんですか?

康次郎:あります!歌と同じでギターも地方ごとに流派があります。

健太郎:地方ごとにかなり濃いですよ!

――お二人の流派は共通しているんですか?

康次郎:僕はそれぞれの流派の個性を少しずつ取り入れています。
今もたくさんの違う流派の人に少しずつ習っていて、全部の個性を取り入れようと考えています。
だから自分の流派は固まってないですけど、最終的に自分の弾き方ができるといいなと思いつつ、今はいろんな流派のテクニックや音楽性などの情報を集めています。

――健太郎さんはどうですか?

健太郎:僕はあまり流派を意識したことはないです。
逆に僕はスペイン人がやってないことをやりたいんです。
たぶん真似しても何も観てもらえないと思うので。
向こうの人たちが面白いと思うのは「僕らが僕らなりにどう解釈するのか」というところだと思うんです。
だから、自分の個性を出して本場の人に「なんだ!あれは!」って思われることを目指してます。

フラメンコのテーマは「恋愛・宗教・土地自慢」

――フラメンコのギターって、男性が多いですか?

康次郎:はい、ほぼ男性です。

――女性だと歌や踊りをやる人が多いのかな?

康次郎:そうですね。
歌や踊り、いろんなプロの人もいるんですけど、女性のギタリストはなぜか少ないですね。

――フラメンコに限らず、ギタリストというと全般的に男性社会という感じがします。ちなみに、男性の踊り手はいますか?

康次郎:スペイン人には結構たくさんいますが、日本だと珍しいですね。
スペインのショーレストランだと男女ともに踊り手がいるんですけど、日本だと踊り手が女性だけのライブが多いですね。

――-素人の印象だと、女性がキレイなドレスを着て舞っている印象があるんだけど、主題は愛の歌や恋の歌、ロマンスの歌のようなものが多いんですか?

康次郎:そういうのもありますし、自分たちの土地を讃える「土地自慢」も多いです。
各地方で生まれている歌が多いので。あとは宗教的な歌ですね。
大きく分けてこの3つですね、色恋やドロドロしたやつと。

――ドロドロしてるの?(笑)

康次郎:結構強烈な歌詞が多いです。

――土地自慢の歌とは?

康次郎:「俺たちの町は最高!」みたいな歌詞です。
フラメンコの歌は各地方で生まれているんですよ。
だから土地の名前が付いていることが多いです。

――そうなんだ!面白いですね!

フラメンコらしさを生むのは、特有のリズム「コンパス」

YouTube フラメンコギター徳永兄弟Channel

――ジャズだと「ウェス・モンゴメリー・スタイル」とか「ジョー・パス・スタイル」とか有名人のスタイルがあるから、いい加減な弾き方だと邪道だと言われる風潮があったりしますが、フラメンコにそういうものはありますか?

康次郎:フラメンコらしさで重要なのは「コンパス」というリズムです。
全部の音楽がそうだと思うんですけど「グルーヴ」を無視するような弾き方はフラメンコの軸から外れていると言われることはあります。
僕は常に「自分の軸がぶれないように!」とたくさんショーを観に行ったり、スペインに行ったりしているんですけど、健太郎は20代前半に帰ってきてから、スペインに一回も行ってないよね?

健太郎:フラメンコしかやってないから、フラメンコ以外を弾くのが難しい状態まできているので(笑)

康次郎:健太郎が凄いのは、軸がぶれないところなんです。
ずっと日本にいて自分で作曲してもフラメンコの軸から外れないんです!
僕は軸から外れがちなので毎年スペインに行ってます。
「なにがフラメンコらしさか?」というのを理解して弾かないと、邪道と言われるかもしれません。
軸がしっかりしていれば自由に弾いていいと思いますね。

健太郎:そういうところはみんな同じだよね、音楽は。

康次郎:でも音楽の中でもフラメンコは自由なほうだよね。
縛りは少ない方だと思う。
フラメンコギターソロはまだ新しくて毎年進化しているので、自由にやっていますよ。

――進化しているのって、いいですね!フラメンコギターをやったことがない方に「コンパス」を一言で説明するとしたら「フラメンコ特有のリズム」ですか?

康次郎:そうですね!フラメンコではリズムのことをコンパスと呼んでいます。

YouTube(フラメンコギター徳永兄弟Channel)で「どんな曲もフラメンコにします」というコンテンツがあってインパクトがありました、何をどのようにアレンジするとフラメンコになるんですか?

康次郎:やはりコンパスが大きな特徴の1つで、それが作り出すグルーヴが大事です。
フラメンコってリズム感や特有のグルーヴが強いのが特徴なんです。
それと、日本のポップスやアニソンを組み合わせて、フラメンコの強い個性である「コンパス」を合わせたらどうなるか?というカバーをしています。

――フラメンコらしさを出すにはリズムが大事なんですね。

健太郎:そうですね。
リズムから入って「この歌ならどういう風にハマるかな?」ということをまず考えます。
コンパスにもいくつか種類があって「どのコンパスを合わせるとこの曲がかっこよく聞こえるかな?ハマるかな?」というのを試していくんです!

ここまで、徳永兄弟が感じるフラメンコの魅力についてお話しいただきました。

満ちる
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最終回にあたる今回は、お二人が大切にしていることや今後の展望について、プロとして音楽活動することによるご苦労や、ギターの上達について重要だと思うことについても語られています。ぜひ続きも読んでみてくださいね。

#4 へ続く

#4は3月25日(金)公開予定です。

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