プロギタリスト志望者が持つ幻想を打ち砕く|ギタリスト下田雄人さん
(トップ写真)プロ活動20周年、40歳の誕生日を迎えたギタリスト・下田雄人(ユージン)さん。ニューアルバム「Present」リリース記念ライブのステージより(東京・丸の内コットンクラブ)
2020年5月の外出自粛期間中にリラックスした雰囲気でオンライン対談に応じてくれました。
今回はコロナ禍を経たこれからの音楽活動の模索から始まり、人との付き合い方のスタンスや困難の乗り越え方、日々のギター練習の取り組み方、長く活動を続けていくための考え方の秘訣などをたっぷりと語っていただきました。
こんな人に読んでほしい!
✔ なんだかんだ言って今の時代、音楽活動を続けていくのは大変だなぁ、と内心感じているアーティスト、ミュージシャン、シンガー
✔ 無理をしないで、マイペースに夢をかなえたいと思っている人
✔ 今まで目標持って自分なりに頑張ってきたつもりだけど、今ひとつ現状に満足できていない人
目次
イントロダクション〜絶対「朝練」派!?
ーーユージンさんって、本当に活動的ですよね!
いえ、全然ですよ。もっと本当に色々したいなと思ってます。
ーー最近Facebookやインスタを開くと、ものすごい確率でユージンさんの投稿でてくる。しかも朝練とかしてるじゃないですか。それって子どもの頃からの習慣ですか?
なんか不摂生でいると活動できないんじゃないかなと思って。例えば昔、コロナ前とかは、演奏が終わったら飲んだりすると、家に帰ってその後に練習することは僕、絶対ないんですよね。
ミュージシャンって、帰ってから練習する方とかいるじゃないですか。でも僕は飲んだらしないし、その日はその日、みたいな感じなので、12時過ぎに帰ったとしたら2時前には寝てしまって、朝起きてやるみたいなタイプですね。それが今もずっと続いてるだけだと思うので。
ーーそうなんですね〜!
とりあえず何でも試してみる
他の人からみると僕は器用だと思われてるかもしれませんが、とにかく何でも試すタイプなんですよ。
試して失敗して「あ、これいらなかったな」「これはやっぱ必要だったな」とか、「このやり方よかったな、これ失敗しちゃったな」みたいなの繰り返してるうちに、なんか色んなことに抵抗がなくなりました。
ーーそれ、大事だね。その「抵抗がなくなる」っていうの、キーワードだと思った。フットワーク軽くどんどんやっていこう、楽しくやっていこう、みたいな軽い感じ?
「やってみよう!」とやっみて、結構失敗するんですよね、僕。
でも毎回も失敗したら、何が悪かったかなぁと考えて、次ここを直してみようと、7、8回くらいすると、「あっ、この前より確実に何か成果が出てきた、よしよし」と思って。
ーーそれって何事にも言える感じ?曲作りだったりバンドとか機材購入とか、すべてにそういうスタンス?
うん、全部そうです。
とりあえずやってみて、何かやれば絶対に成功か失敗するから、失敗したら「何が悪かったかな」ってのを毎回考えてフィードバックしてます。
そして「ちょっとここを直してみよう」ってやって、またうまくいかなかったら「何か悪いんだろう」とまた考えて、それの繰り返しだけな気がします。
コロナ禍でどうする?これからの音楽活動
コロナ渦だからこそ、インスタライブや、ぽこちゃとか、自宅にいながらできることを色々試しています。
それで、そこから利益が出たら、お世話になってるライブハウスとかに還元していきたい。
それから、難しいことをやろうとしないで、スマホ一台でできることとか、できない人目線ですね。配信のやり方とかで自分が知っていることはシェアするし、何でも教えますよ。
今は何でも「シェア」する時代!自分が知ってることをどんどん教えていきたい
やっぱり今の時代って色んな事をシェアした方がいいと思うんですよ。
僕がわかることをどんどん伝えていくと、この人は面白いことを知ってるな、と思って僕に興味を持ってくれる人が増えるじゃないですか。その結果、自分の音楽とかを聞いてもらえる確率が上がるんです。
少し前から、僕はインターネットでYouTubeやtwitter、インスタも頻繁に上げてたんですけど、そういうのを良く思わないというか、「ミュージシャンはやっぱり演奏を一番にしてればいい」っていう人も中にはいるから、そういう人たちからは「そんなのやらないで、練習した方がいいよ」と言われてしまうようなことが以前はよくあったんです。
でもコロナ禍で演奏する機会がなくなる今みたいな状況になると、どうしたってオンラインでやらなくちゃいけなくなってくる。
そうなった時、以前はそんなのやらない方がいい、なんて言っていたような人にも、僕がわかることとか全部、教えちゃいます。
僕、思うに誰もが配信とかそういうのできなくてもいいんですよ。そういうのができないからこそ良い音楽ができる人もいるし、そういう考えじゃないからこそ、できる音楽とか芸術もあるから、それが悪いと思ったことないんですよ。
やっぱり人それぞれじゃないですか。考え方が悪いじゃなくて、どれが合ってる合ってないだけだと思う。
自分に合ってる、自分だったらできそう、とか。
なんかそれに対して、この人はそういうところにも可能性を今、見出してるんだなと思ったら、僕がわかることはもう全然何でもお伝えします。
どう頑張っても変えられないことにぶつかったら
ーー他の人に対して嫉妬することとかありますか?「何であいつが?俺じゃなくて…」とか。
僕も昔ずっとそうでしたよ。やっぱり20代の頃なんかは、ずっと、そういう気持ち強かったと思いますよ。
ーーどうしてそういう気持ちがなくなったの?
僕、ずっと小さい頃は水泳をやっていたので、それこそもう生後6ヶ月から高校ぐらいまで。水泳の強化選手でアメリカまで行ったりとか。
ーーそうだったんですね!
やっぱその時って、僕はもう背が途中で伸びなくなっちゃったので、「背が高い人はいいな」とか、「僕にももうちょっと背があったらな」とか思ったんですよ。
でも背は伸びないんですよ、自分の意志じゃ(笑)変えられないものは変えられないんだなって。
ギターもそうですけど、僕、手がちっちゃいんですよね、かなりね。有名なアーティストの人がすごい大きな手でフレーズ弾いてるのとか見て「あっ、できない」って。
20代の頃は、もっと手が大きければよかったなと思ったけどね。
でも、手、伸びないんですよね、どう頑張って伸びない(笑)
ーーた、確かに。
そういうことを考えるのやめようと。人は人、自分は自分だし、みたいな。
ーーすご〜い!
そこからじゃないですかね、なんかそういう嫉妬しても意味がないと。
嫉妬して何かしようとすると、無理するんですよね。それはフィジカル的にもメンタル的にもね。
それ、意味あるのかな?自分は自分だと思うと、まずメンタル的にすごい楽になる。そしてメンタル楽になると無理なことしようとも体もしなくなるから、フィジカル的にも楽になるから、まぁ、これでいいかな、みたいになりましたね。
それまではもう全然でしたよ(嫉妬したりして苦しんでいた)。
ーーそうだったんですね。
音楽を「スタイル」としてとらえるなんて、面白いな!
満ちるさんとかの活動はすごく面白いな、と思ってみてますよ。僕にない発想でやっていて、すごいな〜、って思うんですよね。
ーーへぇ、最近のとかで、何かあった?
音楽を「スタイル」みたいな形でとらえているじゃないですか。
そういう捉え方をしてる人って少ないと思うんです。その考え方なかったなって思ったんですよね。
それって独自のアイデアじゃないですか、満ちるさんの。そんな風に自分のアイデアを大事にしてるってとこがね、やっぱ僕ね、すごい好き。
ーー本当?嬉しいです!
人って皆、考え方が違うじゃないですか。それを「No」とするんじゃなくて「面白いな」って思った方が、自分にとってもプラスなんじゃないかなって、いつも思ってます。
〜ミュージックライフ・スタイリングはなぜできたか?
▼無理な努力をしてた過去(満ちる)
ーーいやぁ、すごい。本当に嬉しいです。
私は10代の頃からずっとギター弾いてたんだけどね、とにかく、当時の自分がやってほしかったことをやってるんですよ。コーチしてほしかったんです。だいぶ悩んできましたよ。無理な努力を結構していました。
例えば、好きな音楽と自分が弾いてる音楽の乖離がすごくてね。それで、何やっても違う気がする、みたいな感じになっていっちゃったりしてました。しばらくギターに全く触れなくなってしまった時期もあるんです。8年間くらいは他の人が楽器弾いてるのとかも、耳塞いで、違う道を通るぐらいになってたな。
そういうところからの、子ども産まれてからまた(音楽活動を)始めたんですよね。
ちょっと落ち込んでいたのでね、だから、そんな時に「大丈夫だよ」って言って欲しかったし。やっぱり、なんか(笑) 遅いんじゃないかって。
結構30代以上の社会人ミュージシャンの人とか、あとブランクある人で、30代、40代、50代になってからまたやろうとなって、若い頃はね、プロになろうとかデビューしようとか色々考えてたけど、みたいなところで、なんか今更ね、ってなっちゃう。
今までの自分を知ってる人には言うのが恥ずかしいしってなったときに、「実は…」っていうところを安心して話せる場が欲しかったんですよね。
「実は、本当は私はこれからこういう風にしていきたいんだけど・・・」なんて、本音を吐露できる場っていうのはなかなかない。
確かに。
ーー友達とかに喋っちゃうとみんな過去のこと知ってるんで、なんか恥ずかしくて話せなかったりとか。
そういうところでの、本当にその気になっていいんだな、また再びトライしていいんだな、って安心して思ってもらえる場が欲しかったから。
そういうスタンスで話聞いてくれる人とか欲しかったけど、そんな相手はいなかったからね。
誰に話しても、そんなの、それこそさっきの「ググればいいじゃん」みたいな(笑)。それとか「音楽もっと聴けばいいんだよ、以上!!」みたいな感じになっちゃって、なかなか寄り添ってもらえなかったから。
それに学生時代なんかも、自分はまだ何もできない頃、もう入学したそばからプロとして活躍してる友達とかがいるわけですよね。
はい、はい、はい。
ーーできないことを目の前でやすやすとやってのける人たちが周りにいっぱいいて「いやぁ、これ、なんか恥ずかしいし、こんなんでいいんだろうか」とかいう感じでね、悩んでいたから。
女性の場合は特に、結婚したり子ども産んだりとか、物理的に色々ガラッと人生変わるタイミングで、結構今まで頑張ってたやってたことを手放す事ってあるんだけど。どうしてもね、子ども産んだりとか、つわりとかもあるし、それまでとは全く違う生活になってしまう。おっぱいあげたりね。
そんな中で、自分の好きなことを再びやりだすっていうのは、やっぱり馬力がいるんだよね。
そうですよね。
ーー私の場合、本当に子どもが小さい頃は「ワンオペ育児」でした。旦那さんはいるんだけどずっと外で働いていて、子どものことは自分に任されて、あれもこれもやらなきゃ、ってなって、「うわぁ〜><;」ってなって、そんな状況でも、音楽やるならとにかく場数踏まなきゃと無理矢理ライブしようとして、痛いライブをたくさんやって…。
「本当にさ、満ちるちゃんさ、本当にやりたいんだったらさ、もうちょっとできるようになってからステージ立とうよ」とか言われたりね(笑)色々あったんですよ。
なるほど、なるほど、
ーーそれでもやっぱり、ギターを弾くのが好きだし、歌を歌うのが好きだし、作品作っていくのが好きだし、何より私は今、コーチをしていることが好きで、自分が演奏する以上に、周りの人を介してさらにそこから音楽が広がっていくって感じがあって!
こんなことをしたいんです、じゃあやろう、って言って一緒にやっていくと、自分一人で、自分の声とギターで表現する以上な何か、世界が生まれるというか、自分がリーチできない人にまで届いていくから、コーチ、私は自分に向いているな、と思っていて。
それで、皆さんが口をそろえて「そんな風に話を聞いてくれる人は、今までいなかった」っておっしゃる。
なるほどね、確かに。
ーーやっぱり、そういう部分は大事で、私はいくら払ってでも、やってもらいたい、本当にそう思ってたね。なかなかそういう風な人に出会えず、それで自分がその役割を担うようになった、っていうことなんです。
いいですよね。本当に素晴らしいと思う。
ーーありがとうございます!
次から次へと失敗を繰り返せる人が、うまくなる
ーー 先ほどの、何でも試してみようっていう話で、小さなことをどんどん、どんどん試してやってく。できることをやってくうちに、7、8回やるとなんかいろいろ目鼻付いてくるとか、みえてくるという話があったんだけど、私はその本の中で「小さな本番」という言葉を出していて、本当に家庭の中で夕飯の時に歌うとかだけでもいいんですけど、そういう小さな本番を、うちの子どもたちなんかもよくやってますけど、ちょっと小さな台の上に乗って笛を吹くとか、そういういうようなことから始めて、そういう小さな本番を、しょっちゅうやってるとだんだん動けるようになって、抵抗がなくなっていくんですよね。
小さな本番だから、フルコーラスで弾けなくても、サビだけでも弾き語りしてみるとか、リフだけでも弾いてみるとか、ちょこっとしたそういう小さな本番をたくさんやってみようよ、と。
あ〜、めちゃくちゃ面白いですね〜!
どんどんやった例、みたいな感じで、もうなんか次から次へと失敗を繰り返せる人は、うまくなるじゃないですか。
だけど「え〜と、どうしようかな」ちょっとやって、またやめてってやってると、なかなかそこまでたどりつけないまま「やっぱ無理なのかな」ってやめていってしまう。
抵抗感をなくして、”軽い玉をたくさん投げる”って私はよく言ってるんですけど。
できる人たちが「もっと音楽って楽しいよ!」という気持ちを引き出していくことが大切
本当にすごい大事。
あと僕が思うに、そのできる人たちが、どういう風にフォローするかがすごく大事だと思うんですよ。ミュージシャンで大事なのは、もちろん自分の音楽を伝えたりとか表現するっていうのはもちろんのことなんですけど、それと同じか、もっと大事なのは、音楽の楽しさをもっと知ってもらえたら、普通にファンが増えるわけなんですよ。
あの人の音楽楽しいな、感動する、何でもいいんですけど、それは演奏でも一緒で、要は、僕のセッションとかに来ると、たまにそのrpm(アールピーエム、下北沢にあるライブスポット)とかでセッションホストやってると、rpmは敷居が高いイメージがあって行きづらい、とかね、あとは日によっては「この曲できないんだったら…」みたいな感じの時もあるんですよ。もちろんね。
それもそれでね、ちょっとした中級者・上級者の人からすると、いい刺激になるからいいのかもしれないんですけど、僕のセッションなんかは別に言うと、一曲しか弾けないですとか、曲あんま弾けないですみたいな、いいじゃん別に何か一発コードでいいからやりましょう、みたいになるわけなんです。
だから大事なのって、その弾ける人たちが、もっともっと音楽は楽しいよ、っていうのを出してあげて、一人でやるよりもやっぱ確かに楽しいなとか、あと何かやっぱり周りのミュージシャンがしっかりしてると、なんか自分もうまくなった感じになるみたい。そういうところを引き出してあげられるようになれば、もっともっとみんなが音楽、皆さんが楽しくなるんじゃないかな、とか思います。
ーー 本当だね!いいですね!私も1コードで参加していいですか?
もちろんです。
もちろんブルースしかできません、って人が来て、じゃあブルースやりましょう、って言って、じゃあ次に、あの、違うブルース、みたいな人もいるわけですよ。ブルースしかできないわけですから。
でも、それでいいんじゃないかと思いますけどね。これができなきゃいけないっていうのは、その人の「ものさし」ですから。別にできなくていいんです。みんな価値、違うんだし。
ーー なんかすごい安心しますね。
そうですかね、でもそっちの方が楽じゃないですか?
ーー 本当にね。
ねばらならない、に縛られると身につくモノも身につかない!
なんかなんかそうしないと、何が起きるかって、それぞれができなきゃダメだよ、ってなった時点でそういうものの見方をしちゃうと思う。
でも色んな物の見方はあるから、別にそのそれができなくてもいいんじゃないとか思って。もちろんそれがなんかプロを目指すってなったら、やっぱり仕事とする上で必要な物っていうのは絶対出てくると思う。でもなんか趣味でやってる人とか、ちょっとうまくなりたいっていう人にこれをやらなきゃいけないっていうのは、ないんじゃないかなと思っちゃいますね。
ーー なんかこうそうだね、やらなきゃいけない、に私も縛られてたから、辛かったですね。
やっぱり、そうだと思います。ってこれでこれをしなきゃいけないんだって発想で音楽をやっていくと、色々とね、その制約できちゃいますからね。
ーー 本当にその、音楽って楽しいし、いつまでもやってたいし、もっと新しいものが知りたいし、っていう好奇心のようなものが湧いてないのに、やらなきゃいけない、ってなっちゃうと、苦痛でしかないですよね。
うん、でもそれで音楽をやったとしても、多分ね、身につかないんですよね。身につかないものに時間を使うのってもったいないと僕は思っちゃうので、身につくものの方がいいんじゃない?って思っちゃいますね。
ーー その、本当に、宴会芸とか遊び半分というところからプロまでの層があるけれども、なんか無数に、ミルフィーユのようになっていると思うんですよね。伸び縮みして、色々変化していく。
で、その楽しいからなんか声を出してみて、音出してみた喜びがあった、みんなに響いたみたいなところの喜びのものっていうのがその前面にある、すべてのレベルにおいてあると思うけど。
なんか私なんか最初からプロにならなきゃって思ってたんですよ、13歳ぐらいの頃から。それで高校2年の頃からメーザーハウス行って、19歳でMI(Musicians Institute Hollywood、ハリウッドにある音楽学校)に行って、とにかくできる人のいるところに行けば、ほら、バスケが強い高校に行く、みたいな感じで、すごい人たちがいるところに行けば、自分もすごくなれるんじゃないか、っていう誤解というか、そういう背伸びしてて足がつってるような状態でずっといたんですよ。なかなか大変だったし、楽しめなくなっちゃって。
そうですよね。
プロってこうじゃなきゃいけない?!
僕もずっと、20代の頃はもっと「プロってこうじゃなきゃいけない!」みたいな感じで音楽やっぱりやってました。
でも今は全然違うんですよね。趣味が結構あるんですよ、多趣味なんですね。将棋好き、料理好き、読書好き、語学勉強とかそういうのも好き、散歩好き、映画鑑賞好き、と。
ーーなんか、ギター弾いてる時間ない(笑)
そうそう!!そう考えた時に、僕が思ったのは、人生の中で音楽以外も素晴らしいことがいっぱいあってやりたいことがいっぱいあると。
でもやってみたら、「音楽は一番仕事にしたいな」と思ったんです。
だから、音楽に時間は使うけれども、だからと言って僕の人生、音楽だけかというと、他にも好きなことがあるから、他の事も見れるようなマインドでありたいなと思ったんです。
ーーいいですね!
最近カメラも少し趣味になってきて、だから映画とか観ていても「こんな風に撮るとこんなになるんだ」とか、見方が変わるんですよね。
でもそれって多分カメラのことが興味なかったら、ならないじゃないですか。
また何か別の見方でまた別の感動が出てきたりとか。
まだまだ知らないこといっぱいあるな、楽しいなぁ、となります。
たくさんのことをした中で、僕はやっぱり音楽が好きだから音楽をしてて、それでなんか表現して仕事になってるから、やっていこうかなと思ってるけど、別に僕の人生全てが音楽ではないです。
僕の中では色んなことがある中で、今音楽が好きで、上手く伝えていけたらそれがいいなと思ってますね。だから多分、何て言うんだろう、「あの人の技術すごい!」とか言う人だけにフォーカスあんまりされないんです。「あぁ、あの人の技術すごいなぁ」みたいな感じで終わっちゃったりするんですよ。
結局、求めてるものは「感動」なんですよね。
それと僕が求めてるものっていうのは、何においても「感動」なんですよね。
だから絵を見ても映画見ても、なんでじゃあ好きなの?って言ったら、感動があるから。
気持ち的に何かこう、揺らぐ、熱くなるものがあるからなんですよね。
それが感じられなかったら、別にテクニックがいっぱいあっていろんなことができても、あぁ、そうなんだな、な感じなんですよ。
ーー確かに。そうだよね。
だからそこのために、どういう風に自分の持ってるエネルギーとか情熱とか、マインドを持っていけばいいかなというのは考えますね。そのために普段からいろんなものに触れるようにしています。
ーーいいですね!ユージンさんって、すごいバランス取れてるよね、なんか。
いやぁ、だからその意識してるとこなんだと思いますよ。意識をどこに持ってってるか。
だから僕はもうギターだけで、ギターだけが上手くなればいいんだ、ってなると、その人ってギターのことしか考えられなくなっちゃうと思う。
人として、人を感動させたい
僕はそうじゃなくて、人として、下田雄人という人として、人を感動させたいんですよね。
だから、そのために必要なものは何だろう?っていう発想でなんかやってます。
ーーすごい大事なことを教えて頂きました。本当にそこが、抜け落ちていた部分なんですよね。
どこで何をしていても自分らしく(満ちる)
私はスタイリングっていうセッションをやってるんですけどね、コーチングのセッションなんだけど、それを見つける旅なんですよ。
私はよく「金太郎飴」に例えていて、私は金太郎飴だ、と。どこを切っても私なんですよ、何をしてても(笑)
あなたとこうして話してる私も私だし、ギター弾いてる私も私だし、歌ってる私も、子どもの髪を三つ編みしてる私も、とにかく料理をしてても、何をしてても私です、っていう、それってすごい自尊心の高い状態なんですよね。セルフイメージっていうか、自分のことが「これでよし!」と思えている状態。それでそのよし!と思えてる状態で歌うから、ギター弾くから、ピアノ弾くから、その人の音になるんじゃないか。
だから、ストイックに一つの道、ギターであっても書道であっても一つのものだけに特化した人生っていうのもすごくかっこいいけれども、バランスに欠くところもあって、そのことが少しでもできなくなるのだったら、人を差し置いてでも、だったり、寝食を忘れてやっていく、みたいなね。極端に走るというかな、そういうものがその道であるし、かっこいいし、一筋、一流になる道なんだ、みたいなことが、まことしやかにささやかれていたと思うんです。
でも、本来であれば人は食べるし、飲むし、話すし、様々な活動をする中での、トータルとしてのその人だから、何をやっててもユージンだよね、って思われる、何をやってても満ちるさんっぽいよね、っていうそういう軸みたいなものができると、何やってても安心してできる。でもそれがなかった時は、ギター弾いてない自分はサボってるとか… 。
超、わかりますよ、すごく、わかりますよ!!
スタイルをみつける、ということ
▼さらに、過去の失敗談から(満ちる)
ーー 私、今の旦那さんは二人目の旦那さんで、前の旦那さんはギタリストだったんですけど、その人との結婚式は、結婚式のパーティでマイク・スターンの曲とかやってるんですよ。
うわぁ〜、すごいじゃない!
ーー Chromazoneってわかります?
わかりますよ。
ーー 結婚式になんでChromazoneなのか(笑)?
最高じゃないですか!
ーー そんだけぶっ飛んでたんですよ。だいぶ、周り見てないでしょ?
いやぁ、大好きですよ、そういう人。この人、面白いな、って思う(笑)
ーー 私が21歳の時だったんですけど、相手も本当にストイックにやる人だったんですよね。5歳の時からギター弾いてて、それでもその時期でも5時間、6時間、毎日練習してましたよね。とにかく練習の課題とかも壁に貼って、その時マスターしたい曲、So whatから始まって、Actual ProofとかZawinulの曲とかうわぁ〜、って書いてあって、そういうのをコードアルペジオから全部やるわけですよ。
それで、俺を同じだけやってたら、お前もうまくなるから、ってずっと言われ続けて、一生懸命やってたんだけど、だんだん辛くなってきて。彼は彼でもうすでに自分のスタイルをみつけていたのね。
元々、スラッシュメタルとかデスメタルをやっていたんだけど、それにジャズのハーモニーを当てたくてジャズを勉強していたんですよ。そういう音楽を、フリージャズ寄りな感じの音楽を構築して、アルバムを何枚も出して、今、名古屋の方でも頑張って名前の知れている人になっているんですけど、海外でもアルバムデビューして、海外の雑誌がいい評価を書いてくれたりとか、彼は自分自身の世界観を持ってやってる。
でも、私は、その、彼とは音楽性が違うわけなんですよね。だから、なんかこう、そんだけやってる音楽が、あんまり私は…、彼はもう素晴らしいんだけど、私には響かないところもあって、ただ真似していてもしょうがないわけです。
当然、私は私で自分自身の音楽性を探求していかなくてはいけないわけですが、ちょっとこう、何をやってても「これでいいのかな?」って感じになっていっちゃって。
私は人と電話で喋ったり、手紙を書いたり、メールとかがない頃、手紙を書くのがすごく好きで、NYに4泊6日の旅をした時も、その間にホテルにこもって200通も現地から出してるんですよ。ハガキを(笑)。
すごいですね。
ーー ありえないでしょう?それくらい手紙が好きで、コミュニケーションするのが好き、書くのが好き、なんですよね。ギターも好きだけど、書くのも好きだし、なんかデザインも好きだし、人の話聞くのも好きだし、映画も好きだし、う〜ん、どうしたらいいんだ?ってなっちゃって、それが今のユージンみたいにどれをやってても楽しめる、っていう軽さはなかったんですよ。当時は。
だから何やってても、ギターがまず軸になってるから、それやってない自分はダメな奴だ、みたいな感じになっちゃってて。それがもう…
超わかります。
ーー ピーーンと張った糸がプツッと切れたみたいにもうできなくなっちゃってね。
なんか、「もういいっ!」みたいになっちゃって。
で、自分より若い人たちがどんどん活躍していくから、そういうのをみてはイライラしたり、ジリジリした気持ち持ったりして、なんか辛いっていう自分だけど、Chromazoneを弾くくらい好きな訳じゃん、音楽が。ああいうのが好きなんですよね。私もね。ザビヌル(Joe Zawinul)とかスコヘン(Scott Henderson)とかああいうのが大好きなんですよ。私はアレン・ハインズのワークショップとか出てたんですけど、ああいうの、大好きなんですよ。
だからユージンをみると、うらやましくてしょうがない、ってなってて。そこでの、だんだんだんだんこう、ギターに必要以上にフォーカスしすぎてて、辛くなってた、っていうのが、
いや、そうじゃないな、って思って、詩とかも書くんですけど、何をやってても自分であればいいじゃないか、ってなった時に、ふわ〜っと楽になって。
それは結局、自分自身のやりかた、つまり「スタイルをみつける」ってことなんだ、と思ったんです。
音楽にしても、元々ヘビメタ少女でね、パンテラとかメガデスとか弾いてたんですよ。アンスラックス(ANTHRAX)とか、スイサイダル・テンデンシーズ (Suicidal Tendencies) とか大好きで。
バンドもやってたんですけど、どうも演奏してる自分がなんかイメージできないままやっていて、なんか似合ってない気がしたり、なんかそのスタイルっていうところでね、これは好きな音楽だけど、自分が演奏するのはなんかちょっとしっくりこないなぁ、って思いながらやったりしてました。
なんかそういう色々な変遷を経て、スタイルというものは常に模索して、だんだん広がっていて変わっていたりするから常にアップデートされていくでしょう。そういう自分の軸みたいなものが、何をやってても大丈夫だっていう安堵感というか。
わかりますよ。
ーーそういうのってすごい大事だし、それがあれば、何やってもハッピーで幸せな気持ちでいられるから。
なんのための練習なのか?
もしギターをやってて、ギターをやってればうまくなるかって言うと僕はそう思わないんですよね。
映画を見たりして感動することも、結局ギターがうまくなると思うんですよ。
何のためにギターをやってるかって考えた時に、自分の満足のためにやるんだったらひたすら練習すればいいと思うんですけど、相手に伝えてこそ仕事になると思ったら「こういうことで人は感動するんだな」とかもし分かれば、それは絶対に自分の感性として持っておくと、相手に伝える時にも「こういう人にはこういう風に伝えるともっと伝わりやすいんだな」とかなると思うんですよ。
だから、生徒さんとかにもよく言ってることが、興味があれば映画とか本はいっぱい読んでみた方がいいよ、たくさん感動した方がいいよって言ってます。技術だけが音楽じゃないから。
「何でまたライブに来るの?」と言ったら、感動するからなんですよ。
そのための「感動するとは何?」というところもちゃんと見ていかないと、自分よがりになっちゃうから!
何か仕事をするってことは一人でやってるわけではないので、みんなで何かを作り上げる。そのためにどうしていくかを、普段から考えてくっていうのはすごい大事じゃないかなとか思うよね。
例えば、生徒さんが、「最近彼女と別れても全然ギターに集中できないですよ。でも弾かなきゃいけないと思ってんですよね」と。そういうとき僕は「弾かなくていいよ!」と伝えます。そんな一週間弾かなかったからって言って、人生のうちの一週間だから。
仕事をずっと一生続けていきたいんだったら、一週間なんて人生のうちのほんと短い時間。だから、悲しんだ方がいいよ、たくさん悲しんで、めっちゃ悲しんだ上でギター弾いたら、それは、そういう曲弾いた時にめっちゃ反映されるからと。
「まぁ、しょうがないか」とごまかしながらやるよりも、思い切り悲しんだ経験は絶対にギターに反映されるから、といつも言ってます。
ーー本当にそうですね。
だから、そうですよね。練習だけにフォーカスしちゃうと、全てがそこだけに行っちゃう気がしますね。
もちろんテクニックとかはね、プロでやるならあった方がいいに越したことがないけど、でもそれだけじゃない。感性もそうだし、自分のメンタル面もそうだしフィジカル面もそうだし、そういうのをすべて加味して、出す音とか音楽ってのは変わってくる、と僕は思ってますけどね。
なくなって初めて気づく、当たり前の日常への感謝
このコロナになって考えさせられたのは、今まで当たり前だったことってのはすごい良いことだと思えたんですよね。普通にライブができるとか、普通にお客さんと話せるとか。
ーーなんか当たり前だと思っっちゃってると、感謝するとか、よかったな、とか思えないけど、ありがとうの反対言葉は当たり前だって。それもっともだなと思いました。
だって今に状況はありえないことじゃないですか?世の中中の人が外に出るなとか。
こんな状況だからこそ、一人でいなきゃいけないからこそ、誰かとつながろうとする気持ちとか、約束して会えるってすごいことなんですよね。
だから、まあね、なんか自分の心もマインドもそういう風にいつも持ってってれば、感謝の気持ちとかね、忘れないようにします。
ーーなんかすごい考え方の部分、マインドの部分で、すごい大事なものを教えていただきました。
いえいえ、でも全然です。
人との出逢いやおつきあいにおいて、心がけていること
僕、いろんな人に会ったりしますが、「この人素敵だなー」って思う人がいっぱいいるんですよね。そういう人の多くは、「また会いたいな」とか「この人みたいになりたいな」って思うんですよね。一度会っただけでそう思うってすごいなと思うんですよね。
僕もそうなりたいなって、やっぱりいつも思いますね。
それは何だろう、最初言った「自分にわかることは、全部伝えること」。まず自分から相手に出していかないと、相手もね、心開いてくれないですから。なるべく心を通じて話し合えるっての大事だなとか思って。
人を変えることできないですから、自分が変わる。
自分がどういう風に変わっていけば、いろんな人といい付き合い方ができて、いい付き合い方が出来れば人生ももっともっとよくなる可能性が増えるから、そのためには何をしてこうかなってのは、やっぱりちょっと思ってますね。
ーーとってもなんか、柔軟でね、サステナブルな生き方だな、って思いました。
日々のギター練習への取り組み方
ーー毎日のギター練習についても、教えてください。
とにかく「楽しむ」気持ちでやっています。
要は、今日は自分ができてないものが出来たってとこに喜びを感じたり、昨日よりちょっと弾けてるから、じゃあ、またやろうみたいな感じで、その「楽しむ」っていうのが加わると、長く続けられます。
僕なんて、ちょっと大変な練習とかは、もう30分なんて絶対やんないです。20分ぐらいでやめちゃいます。
ーーその「ちょっと大変な練習」っていうのは、どういうことなの?新しい曲の、なんかヘヴィーな進行を覚えるとかそういうもの?キメとか。
そういうのもそうだし、後はクラシックの曲とかをピックで弾く練習とかもたまにするんですけど、まぁ、修行僧みたいになるわけですよ、その瞬間は。
ーー難しいよね、ピックで弾くのって。弦飛びが多いもんね。なんでそれを自分に課してるの?
これができたら、もっと今僕ができてないものに対して、楽にできるんじゃないかなってちょっとイメージがあるから、それをやってるんですけど、でも「楽しい?」って言われたら全然楽しくないから、じゃあもう20分ぐらいでやめようと。
ーー時間区切ってやってるって感じ?
そうそう!これ以上やったらもう体が嫌になるなって前にやめちゃいます。無理、無理みたいになる前に。
ーー嫌になる前にやめて、次のことをやるってこと?
そう、だから逆です。もう一日20分しかしないと決めたら一日20分しかしない。それ以上やってると嫌になっちゃうから。
ーーキツイ練習のところだけじゃなくても、そういうアプローチ?ノッてきたら?
そうそう、集中できるんだったら続けますけど、ノッてない時はもうやらないスタンスです。
ーーそれ、いいですね。
もう無理、無理、ダメだ〜。と思ってやめちゃいます。たまに、ここは頑張ったほうがいいな、みたいな感覚になった時は、ちょっと頑張りますけど。
ーーそれって、自分でわかりますよね。
マインド的に、もうちょっと頑張れそうだなとか、頑張れないな、もう全然頑張れないとなった時には、もう無理にやったらつまんなくなるから、あ、やめよう、みたいな。
ーー大事、それ!
そう。でも、仕事だったら締め切りがあるとかあるじゃないですか。
でも僕、締め切りの時でも、「なんとかやんなきゃ、やんなきゃ」ってやるよりは、「もうだめだ、もうこれはいいのが思いつかない」と思ったら、20分とか15分とか散歩して、好きなコーヒー飲んで休んじゃいます。
で、「よし、もう一回やろうかな」みたいな。
だから大事なのは、心のゆとり、気持ちのゆとりみたいのは、すごい大事にしてます。
周りが見えなくなっちゃうと、やっぱりどうしてもなかなか上手くできないから、自分をどうコントロールするかって大事ですよね。
修行僧みたいに、今日はこれをやるんだといって、グワッとやる人もいるんですけど、なんか僕とかは、「あ〜、無理、無理、もう今日は20分。やった、やった」みたいな感じです(笑)。
うさぎとカメの話
人生は僕の中では、これ、よく生徒さんにも言ってるんですけど、ウサギである必要ないんですよ。亀でいいんですよね、なんでかって言うと途中でバテちゃったら意味ないから、人生なんて長いから、亀で、毎日ちょっと進めばいいじゃん、って思うんですね。目的に着いてれば。
ーー向かってればね、そこにね。
そうそう、そうそう、そうそう、その目標、自分がこうなりたいってのがあったら、そこを定めるのはいいことだし、そこにね、目標持ってれば、行ける可能性は上がると思うんですけど、それが、「よ〜し、この半年で」とかないんですよ。もう僕は音楽好きだから、このまま、好きなことをやりながら、やっていけるように、でも目標はここにあるから、ここに行けるようにはしよう、みたいな感じでやってるだけです。
だからなんか、その日できなかったこととかにつまづかないんですね。
ーーめっちゃ余裕ありますね。
その方が楽じゃないかな。そうしてくと、時間の使い方が無理がなく続けられるので、僕は続けられますね。
ーーすごいですね。
1日8時間練習しようって言って、一週間とかやったことももちろんあるし。それ今も続けてられるかって言ったら続けられないんですよ、僕はね。絶対に。
こんなに(長時間)家にいるのに、練習は、朝起きて2時間とか1時間半ぐらい。また練習っていうのは2時間ぐらい夜にとってるくらいだから、合計4時間しかやってないです。
これだけ時間があっても「それで何やってるの?」って言ったら、本読んだり、映画見たり、毎日ご飯作ってると飽きちゃうから、ちょっとなんか新しいものチャレンジしてみようかな、とかしたり・・・。そんな時間に費やしてる。
このコロナが長引いた時に、こうじゃなきゃ、こうじゃなきゃ、こうじゃなきゃ、ってやってる人って、疲れちゃうと思うんですよね。
もちろん生活する上で、生活費を最低限工面するっていうのはすごい大事。
だから、そこはもちろん考えますけれども、でももう最低限のところが見えてきたら、僕はもう逆に言うと、そこに縛られないようにしてます。
ーーそうなんだ。そこはすごい大きいと思うよね。
仕事したり、レッスンやったり、納品するもの作ったりとかってところでの、マネタイズのところをね、問題抱えてる人は少なくはないと思うけど、そういうところでは、最低限のところっていうのを作ったら、それを少しでもこう、もっとたくさん稼いでやろう、みたいなところで注力するよりも、全体的に自分の時間の使い方がもっと余裕できて、気持ち落ち着いてできるようにって考える感じ?
そうですね。そっちの方が結果としてね、多分仕事に結びつくような気がするんですよね。
やっぱり僕はさっき言った、それだと疲れちゃって長続きしないタイプだから、「まあまあ、もう仕事も何とかなってきたな、ようし、じゃまこの感じでいこうかな、うんうん」みたいな感じです
すべてをうまくいかせる秘訣とは?
ーーじゃあユージンさんみたいになるには、どうしたらいいですかって言われたらなんて答えますか?
僕はもう、完全に、映画とか本とか読む時間を作ってるのと、考える時間を作る。
ーー何を考えるの?
何でもいいんだと思います、1日に1時間ぐらい、自分について考えるでもいいし、仕事について考えるでもいいし、音楽について考えるでもいいと思うんですけども、「考える時間を作る」ってのが僕は一番大事だと思うんですね。
その考えるっていうことを、みんなやっぱしなくなっちゃうと思うんですよね。
「誰々がしてるからしてる」って言うのは、考えてないんですよね。それをすることで安心しちゃってるだけだから。
でも自分の人生を楽しく生きたいとか、自分はこうなんだ、って思うものがあるけど、っていうんだったら、やっぱ、考える時間を作るのが何より大事で、考えたらやってみて、それで失敗しながらまた考えてやってみての繰り返しな気がします。それだけでいいんじゃないかな(笑)
ーーそれ、すっごいヒントですね。
考えることって、誰でもできる自由
考える事って、ある意味、誰でも出来ることで自由じゃないですか。それが1時間なのか2時間なのか、30分だとか、人それぞれでいいと思うけど。
ーーおそらくね、その一かたまりになってる、じっくりできる時間っていうのを自分に与えてあげるって、例えば主婦とかだと大変な訳ですよ。常に誰かお腹空いた人が入ってきて、お腹すいた〜、とか、時にはうちの下の子は5歳ですけど、トイレでうんちしたからおしりふいてくれ、まで入ってくる。とにかく何かやらされるわけ!
とにかく6人家族だから、洗い物も洗濯も、もうとにかくやること多いけども、今では私も自分一人になれる時間っていうのは確保させてもらっていて、その時間を使って考えてること書き出してみたり、ぼ〜っとしてる時もあるし、とにかく、一人時間が大事ですね、やっぱり。
忙しくて焦っている時ほど、無駄なことやってたり
ーーその忙しくて焦ってる時って、そういう時間を持つことをもったいないって思ったり、しちゃうじゃないですか。何かやってようとするっていうか。でも、逆ですよね?
逆です。
あのね、結局、実際、無駄な事をやってる事のが多いんです。
だから例えば、よく言うんですけど、生徒さんとかで「もう今この時期(コロナ禍で自粛)だからもう思いっきり練習して…」まあそれでもいいと思うんですよね、なんかいろんなことを考えながらやってたら。
でも多くの人はそういうの何も考えずにやってるから。
それって本当に自分の行きたいとこに行けるのかな?っていった時に、行けないと思うんですよ。
なぜなら、目標を定めてそこに人生を投下するから、そこにいける可能性が出て、どういう風に時間を使っていけばいいかが分かってくると思うんです。
だから今もこぞってみんな「オンラインでなんかやろう、オンラインでなんかやろう」って。
もちろんそうだと思うんですけど、でもあの人がライブ配信してるから自分もライブ配信しようっていうのは、それは違うと思うんですよ。
ーー確かに。
そうじゃなくて、自分はここに最終的にここにたどり着きたいから、ライブ配信をするんだ、が大事なんですよ。
でも、それがないから、みんなじゃあやろうやろうってやって、果たして本当に大事なの?とか僕は思っちゃいます。そんな感じがしますけどね。
ーー大事ですね。そのどこに向かってる努力なのかっていうところが、なんか、よく、成功者をモデリングしなさい、とか言うことがあるじゃないですか?自分が憧れてる人とかそういう人が言ってるから何時間やるとか、何々の運指の練習をこうするとか、それを取り入れるのは、考えた上であれば意味があるだろうし。
例えば先ほどお話した前の旦那さんとかだったら、ヘヴィな音楽にジャズのハーモニーをつけたいから、アルペジオやってるとか、意味があるじゃないですか。そういう、目的に結びついてる努力なのかどうか。
誰それが言ってるから、これが出来ないとプロじゃない、とか、色々言うわけじゃん?いろんな人がね。そういうのに踊らされて、あ、じゃあそれもやんなきゃ、これもやんなきゃ、って、結局蓋を開けたところで、何か色々やってみたけどいろんな方向を向いちゃってて、なんかまとまりがなく、何をやってたんだろう、みたいな感じになりうるよね。
なりうると思います。
ーー 思索の時間、考える時間、一人になる時間っていうところが、その「軸」を作り、また回していく、核となる要素ですかね。
そうだと思います。
考えてうまくいかなかったことに対して、どういう風にもう1回するのかとか、それを繰り返して、だから後は何か楽しいことをやってけばいいんじゃない?とか思っちゃいますけどね。自分の好きなことを。
僕は生徒さんに「絶対、30分でいいから、1日、考える時間を作った方がいいよ」って言ってますね。
ーーいいですね。すごい大事なことですね。
そこで大いに悩んで、悩むことで、自分の求めてるものが出てくるんです。
自分が本当にやりたいことってやっぱり自分が考えたり悩んだりすることで出ることのが多いと思うんですね。だからそういう風に考えてあとは行動してくだけかなみたいな。
ーー生活面の工夫、朝起きてから寝るまで。人によって睡眠時間とかね、仕事の拘束される時間とか違うけど、家族がいる、いないとか。自分が自由にできる時間っていう中で、その絶対にうまくいくスケジュール、なんてないわけじゃないですか。
全員に当てはまるものなんてない訳だから、自分なりにそれを見つけ出していく、それを磨いてくっていうか、それをでも「こう決めたから」っていうのに縛られないで、うまいことやってく。
できない時なんてできないから、「あぁ、できなかったなあ、まあ、しょうがない、こんなもんだ、自分は」って思って、また次の日やるみたいな。
やっぱり考える、逆もありで、考える時間も必要だけど、考えない時間も大事かもしれないし。
ーーメリハリですね。
人生なんて絶対、ウサギより亀ですよ、僕は。
だから、焦らないんだよ。うん。人となんとか、って競争しようとするのって、もう僕からしたらウサギですから。もしそこにたどり着いたとしたって、息切れしてしまっては意味がないので。
できないものはできないし。要は、うさぎと亀の、あれはね、あの亀はどう考えてもウサギみたいに走れないんです(笑)。でも、たどり着いてるわけですから、どっちの人生がいいのか?
僕はなんかそっちの方が大事な気がするんですよね。だから、それでいいんじゃない?って生徒さんにもよく言ってます。
ーーいいですね!
楽しいですよ その方が。
ー ー 本当にギターも「何をもってうまくなったといえるのか」は、その人が何に価値を置いてるかによっても、やってることによっても、全然違う訳じゃない?
だから、そういうところで、やっぱり自分が大切にしてるものだったり、目指してるものだったり、そういうものが定まって来れば、意味のある努力ができるし、また焦りなく、少しでも進んでるからいいやって思えるし、楽しめるけど。
そうじゃないと「これでいいのかな?これでいいのかな?」って常に不安になっちゃって、それですっごい疲弊するじゃないですか。
うん、そうですよ。
それはなんか、感じてる人は多いかなと思うし。そうすると、今話してるような、生き方っていうのかな、あり方みたいなところが、皆にこう自分にできることをどんどんお伝えしていこうと。
もし知りたいことあったら何でも聞いてっていう感じでやってくっていう。
ーーそのスタンスによって「こんなこと興味持ってる人がいるんだ!」という感じで、周りに人がいる状態ができてきて、そんな人がやってる音楽だったら「ちょっと聴いてみたいよね」ってなったり、何回か会話しただけでも人には興味って持つからね。
それでさらに、「音楽って、生演奏って楽しいね!」とか、聴いたことがなかった人が思ったりでまた来るようになったり。色々な相互効果が生まれてきますよね。
うん。本当そう思います。いや、もうなんかぬる〜くやってます(笑)
ーーぬるい中にも、なんか、よりよくしていこうっていう意図みたいなものが織り込まれているから、うまくいくんじゃないですか?
いやいや、なんか、できないものはできないし、なんか無理せず、自分の好きなところをちゃんと目標だけは定めて、目標、逆に言えば、なくてもいいのかもしれないですけどね。なんか目標に向かうだけが人生でもないかもしれないから、いろんな発想を常にしながら、自分の生活、自分の人生において、楽しかったなって思える方がいい気がしますよね。
それに対して努力が必要だったら、まぁ、続くようになる努力をしていく。楽しみながら。それぐらいなもんですよね。
ーーありがとうございます。こういう話がききたかったんですよ。すごいヒント満載ですよね。
新たな気づき〜子どもが生まれて考える時間ができたから、音楽再開できた!(満ちる)
ーー例えば子育て真っ最中の人なら、子どものいる今だからこそ出来ることで考えないと。よくお母さん達と話してるとね、子育てってすごい仕事なのに「私には子育てしかできない」とか言ってる方がいるんです。私からしてみると、子どもがきいたらどう思うか。そう言ってるお母さんの言葉をきくと、ちょっと悲しいと思うんです。
子どもいる人って「昔のようにはできないしね」って言って諦めちゃう、すごいいいもの持ってる人たくさんいて。だから本当に、子どもがいる今だからこそ 何か感じられる喜びとかを歌にできればいいじゃないかって思うんですよね。
素晴らしいですね。
ーー私も、でも子ども生まれなかったら、ギター再開しなかったかもしれないですよ。
今、話しながら気づいたんですが、考える時間があったから、音楽再開できたんだと思います。
ミュージシャン志望者が持つ「幻想」を打ち砕く
だって、ミュージシャンは音楽だけをしてなきゃいけないから、っていうのは、完全なる幻想ですから。
結構、プロ目指してる子いっぱいいると思うんですけど、そんなことないですよね。映画に行ったりもするし、本読んだりもするし、みんないろんなとこにワクワクしながら楽しんでて、その中で音楽が一番好きってなるだと思うんですよね。
ーー 本当ですね。音楽と何かを組み合わせるっていうのも。この間インタビューした方で、ずっと人の伴奏などをしていたピアノの人なんですけど、結局、お芝居が元々好きだったんですね。それで、お芝居の劇伴、劇中歌とかを書くようになって、そこからインスパイアされて、どんどんそれが、もう100曲くらい書いて、自分なりのスタイルに。
お芝居と組み合わせた音楽活動に活路見出し飛躍|ピアニスト、作編曲家・cue(キュー)さん
1日3時間ぐらい散歩するって言ってました、彼女は。それでその中で色々音楽聴いてみたり、色々浮かんだことを帰ってからまた仕込むみたいな。そういう毎日なんだって。しかも亀飼ってて。
亀飼ったら、長生きしなきゃダメですね(笑)ちょっと、もう自分よりも長生きだからね。
ーー(笑)そんな感じでね、楽しいですよね、人の日常をちょっと肩越しにのぞくっていうのは。
いやぁ、いいですよ。そういうのいいですよね。
ーー そう、だからそれはシリーズものとして展開していけば、その日常の中には、いろんな人が音楽活動していく中で「あっ、そこすごいヒントになる!」ってことって絶対あるんですよね。
だから、この対談インタビューも、きっと誰かの未来に影響を与えるものになると信じています。
今日は、貴重なお話をきかせてくださり本当にありがとうございました!
考え方の部分だったり、時間とか練習に対するスタンスとか、人に対するスタンスとか、本当にヒントをいっぱいもらいました。
こちらこそ、楽しかったです。またお話しましょう!
下田雄人 Eugene Shimodaさんについて
2012年練馬文化センター大ホールにて、下田雄人グループとして出演。ジャズ、FUNK,R&B、FUSION等ジャンルを選ばないプレイで多方面で活躍中。2015年ギターリストAllen hinds(スティーヴィーワンダーのバックミュージシャン)と共演、また同年ピアニストのMartin MusaubachのJapan tourにも参加している。
自己のグループT-tripで台湾ツアーなども行う。2016年には、台湾、香港、マカオ、北京など自己のグループT-tripにてツアーを行う。
そして、もう一つのバンド Gt下田雄人 Ba日野JINO賢二 Pf柴田敏孝 DR菅野知明 とToto's best Friendsを結成。注目のギターリストである。
また、アレンジャー、コンポーザーとして大沢たかおのDVDにおいて、作曲/アレンジ/演奏を手掛け、国内線JALのBGMなどにも曲を提供。
下田雄人 Eugene Shimoda official site
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インタビューを終えて
お話をうかがいながら、温かいお人柄と絶妙なバランス感覚にうなるばかり!
名言だらけの2時間でした。
まとめ
- とりあえず何でも試してみる。何度も繰り返すうちに「抵抗」がなくなる!
- 今は何でも「シェア」する時代!自分が知ってることをどんどん教えていきたい。
- 嫉妬して何かしようとすると、フィジカル的にもメンタル的にも無理をする。だから自分は自分、と考えることで楽になる。
- 次から次へと失敗を繰り返せる人が、うまくなる!
- 練習は、楽しむスタンスで。やらねば、では身につくものも身につかない。
- 1日30分でいいから、ひとりで考える時間を作り、大いに悩むことで、自分の求めてるものが出てくる。
- なんのための練習なのか?目標を定めてそこに人生を投下するから、そこにいける可能性が出て、どういう風に時間を使っていけばいいかが分かってくる。
- 相手に伝えてこそ仕事になると思ったら「こういうことで人は感動するんだな」とかもし分かれば、それは絶対に自分の感性として持っておくと、相手に伝える時にも「こういう人にはこういう風に伝えるともっと伝わりやすいんだな」とかなると思う
- まず自分から心開き、自分にわかることは全部出していくこと。
- ミュージシャンは音楽だけをしてなきゃいけないから、っていうのは、完全なる幻想。
- 映画を見たりして感動することも、結局ギターがうまくなると思うんです。
スタイリング・メッセージ
今回の対談インタビューは、日々音楽表現を磨いていこう、音楽で成功しようと頑張っている人にこそ、読んでもらいたいと思います。
ユージンさん、ありがとうございました!また「話の続き」をきかせてください!